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歯根について

歯は食物を噛み砕いて飲み込みやすくするだけでなく、発音や顔の表情、体の姿勢やバランスにも影響するなど日常生活に不可欠な役割を担っています。口の中で見えている部分を歯冠、その下の見えない部分を歯根と言い、歯茎に守られ歯槽骨と言う顎の骨の中にしっかりと埋まっています。表面はセメント質で覆われ、内部は象牙質歯髄が走行している歯髄腔で構成され、歯根と歯槽骨の間を歯根膜と言う繊維状の組織が両者を結びつけています。この膜は歯にかかる衝撃を受け止め、顎にかかる力を吸収し緩和させるクッションの役目をしています。

歯根の中で一番外側のセメント質は、歯頚側2分の1から3分の1の象牙質を薄く覆っている無細胞セメント質と根尖側3分の1にあり、無細胞セメント質を覆う有細胞セメント質に分類されます。無細胞セメント質はセメント芽細胞を含まず、歯の固定と支持の役割を果たしています。さらに、一方の有細胞セメント質には、セメント芽細胞が存在し、シャーピー線維やセメント質固有の繊維を含みます。萌出や移動によって負荷される力の変化を補正する役割があります。セメント質は、特に根尖部や歯根分岐部が厚くなっており、加齢と共に厚さが増していきます。また、高齢者は歯槽骨と癒着する場合もあります。その内側にある象牙質は、弾力性があり歯の根幹となる再生可能な硬組織です。象牙芽細胞により作られ、エナメル質よりも柔らかい為、むし歯になると進行が速い組織です。全体を象牙芽細胞の突起を含んだ象牙細管が走っており、象牙質の形成と維持を行います。また、弾力性があり衝撃によって歯が割れることを防いでいます。約70%が無機質であり、コラーゲン繊維を含む有機質が約10%と水が約10%という組成になっています。最も内側にある歯髄腔の中の歯髄は、疎線維性結合組織のことです。多くの神経が存在しており、痛みなど歯の感覚を担っています。また、多くの血管があり、歯に栄養を与える組織でもありますが、加齢と共に歯髄の神経や血管の数は減少していくという特徴があります。歯髄の役割として、象牙質の形成や炎症などに対する防御反応なども挙げられます。これらの組織よって歯根は構成されています。