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静脈内鎮静法について

近年、歯科医療の現場において新たな麻酔方法として静脈内鎮静法が注目を集めています。一般的に歯科治療で麻酔と言うと、歯茎に注射針を刺して一時的に痛みの感覚を消失する局所麻酔の方法が主流でしたが、この注射に強い不安と恐怖心を感じる人が多いのも事実です。2009年に策定された日本歯科麻酔学会のガイドラインによると、「歯科治療に対する恐怖心や不安・緊張を最小限に抑制し、円滑・快適かつ安全に治療を施行する目的の為に、薬物を使用して行う方法を精神鎮静法という。精神鎮静法は薬物の投与経路によって、吸入鎮静法と経静脈的に薬物投与を行う方法があるが、後者を静脈内鎮静法という」と定義づけられています。鎮痛薬や向精神薬を静脈に直接注入することで麻酔状態をもたらす方法です。

静脈内鎮静法は不安を軽減するリラックス効果や、治療中のことは覚えていないと言う健忘効果を得られます。時間的な感覚も麻痺し実際より短く感じたりします。嘔吐反射がある方の声を聞くと、「点滴から薬液が入り始めると徐々に眠るように意識が薄れ、覚醒後は普通に寝起きの感覚だった」「こんな治療法があるなら早く受ければ良かった」との感想を漏らしています。静脈内鎮静法のメリットは、上記のように肉体的、精神的なストレスや苦痛が緩和される点、刺激反応が抑制されるので循環、呼吸状態のバイタルが安定する点、健忘効果によって局所麻酔や治療時の記憶が残らない点、そして静脈路を確保している為、緊急時にも迅速な対応が可能な点が挙げられます。これら患者側のみならず、術者である歯科医にとっても負担を減らしスムーズな治療を進められるメリットがある方法です。この静脈内鎮静法は、インプラント施術など外科的な手法を使用する際、歯科恐怖症の人や治療中に吐き気を催す嘔吐反射が強い人に最適な麻酔法です。高血圧や心臓病などの疾患を抱えている人の場合も、心電図や血圧計などの生体モニターで状態をチェックしながら治療しますので、術中の体調の変化にも迅速な対応が可能で安全性も高いものです。静脈内鎮静法を行って治療をする場合は、事前の体調のチェックを必ず行います。麻酔医から体調についての質問がされますので、不安や疑問点などは解消しておくと良いです。点滴で麻酔薬が注入され1~3分ほどで効果が出始め意識もぼんやりしてきますが、医師の指示などには応じられる程度です。鎮痛効果を補う為の局所麻酔の注射をしますが痛みや不安を感じることはなく、十分に効果が表れたことを確認した上で治療が始まります。これまで歯科治療に恐怖心や不安があり歯科医院に足が向かなかった人でも、安心して治療を受けられると評判ですが、保険診療が可能かなど費用の面でも事前に確認しておくことは重要です。