子供の指しゃぶりと歯並びについて
【胎児期から始まっている指しゃぶり】
小さな子供の育児をしている保護者が持つ関心事や悩みの中には、指しゃぶりがあります。指しゃぶりは、実は生まれる前の胎児期からすでに行っている行為で、胎生14週頃から手を口に持っていくようになり、24週頃には実際に指を吸うという行動へと変化し、32週頃には指を吸いながら羊水も一緒に飲み込む行動に移ります。これは生まれてからの母乳を吸う練習をしていると考えられています。そして乳児期には生後2か月頃より自分の口の近くに来た指や物を無意識に吸うという行動が見られ、生後5か月頃からは近くに来たものを口に持って行き、しゃぶり始めるようになります。これらの行動は、目で見た物と手や口で触れた感覚との繋がりを学習すると共に、その物の形や味などを学習している為、乳児期の成長過程には必要不可欠なものと言えます。しかし、つかまり立ちや伝い歩きが始まると指しゃぶりをしていては手が使えない為、指を吸う行為は自然に減少していき、積木や自動車、人形などのおもちゃを手で持って遊ぶ1~2歳時期になると、退屈なときや眠いときなどだけとなります。そして家庭を離れて友達と遊べる3歳~就学前になると殆ど行わなくなります。
【指しゃぶりと歯並びの関連性】
中には学童期になってもやめられない子供もおり、昼夜頻繁に行っている場合は特別な対応をしてやめさせる必要があります。それは、子供の指しゃぶりと歯並びについては大きな関連性があり、歯並びのみならず顎の成長にも影響がある為です。しゃぶり方や使う指などにより違いますが、上の前歯が前方に出る上顎前突、上下の前歯に隙間が空く開咬、上下の奥歯がずれて中心が合わない片側性交叉咬合といった弊害が起こります。このような歯並びの異常は口呼吸や舌癖、構音障害が生じやすく、上顎前突の場合は前歯が突出することで唇を閉じるのが難しくなり、口を開けている癖がつき口呼吸になる傾向があります。また開咬では上下の前歯の間にある隙間に舌を挟む癖や、飲み込む際に舌で歯を強く前に押す癖が現れやすくなるので、サ行、タ行、ナ行、ラ行の発音が舌足らずになることがあります。そして開咬及び下顎を抑えるようなしゃぶり方をしていると、下顎の成長が抑えられて骨格的にも出っ歯になる場合があり、上唇の突出にも繋がります。このように指しゃぶりは歯並びに大きく影響を与えるものです。乳児期に見られるのはその発達段階において自然なことであり、3歳頃までは特に禁止させる必要はありません。しかしながら、それ以降も頻繁に行っている場合は外遊びなどでエネルギーを発散させ、寝るときには手を握ったり絵本を読むなどのスキンシップで子供を安心させるようにして、指しゃぶりをやめさせましょう。それでも改善されない場合は小児科医や歯科医、臨床心理学士などの専門家に相談してみましょう。