咬合について
咬合とは上下の歯の噛み合わせのことです。歯並びが綺麗だと顔の外見上の美しさもさることながら、良く噛むことができるので消化を促し顔色も良くなると言った健康面での美しさにも繋がります。上下の歯が適切に噛み合っていないと、見た目にも機能的にも悩みの種となります。一般的には上下の歯を噛み合わせた時に、上の中切歯は下の中切歯の3分の1から4分の1を覆う程度で、上下の歯がバランスよくしっかりと噛み合うことが理想的です。前歯の中心が上下一致しており、上下の歯が隙間なく噛み合い、1歯に対して2歯という関係である事、上前歯が下前歯の外側に2mm程かぶさる位置が基準です。しかし、歯の大きさや形など個人差があり、それぞれに最善の噛み合わせが存在します。機能的に問題の無い場合であれば、その人にとって正常な範囲内であると言えます。噛み合わせ時の下顎の位置は歯の接触関係により区別されます。咬頭嵌合位は中心咬合位ともいわれ、ICまたはICP(intercuspal position)と呼ばれます。上下の歯列が最大の面積で接触し、安定した噛み合わせの下顎位置を指します。これは顎関節や咀嚼筋群にとって最も負担の少ない状態です。偏心咬合位は咬頭嵌合位から前方・後方・側方に偏った場合をいい、その方向によって呼び方も違います。習慣性咬合位は習慣的に噛む位置をいい、下顎頭の緊張もなく安定しており、筋肉の調和もとれている状態です。咬頭嵌合位とは別にもう一つ噛む位置が存在する状態を二態咬合と言います。
噛み合わせが悪くなる原因には、大きく分けて先天的なものと後天的なものが考えられます。顔や体格が親に似るのと同様に歯列についても親の遺伝を受けやすいこと、生まれつき歯の数や形、唇などに異常があるなどが先天的な要素です。後天的な要素は、乳歯の生え変わりが順調に進まず、永久歯の出る隙間がなく乱杭歯や八重歯になってしまったり、幼児期の指しゃぶりや噛み癖、柔らかい食物の摂取で顎が未発達になるなどの生活習慣、鼻づまりや扁桃腺、アデノイド肥大などの耳鼻科系の疾患も、上顎前突、開咬になり易い要因です。この他にも乳児期に顔や口元を強打した影響で、永久歯の根が曲がったり捻じれて生えてきたり、あるいは骨の中に埋まったままで生えてこないこともあります。正常な噛み合わせができないと様々な障害が起こります。ブラッシングがしにくい為に虫歯や歯周病にかかり易いこと、食べ物を上手に噛めない咀嚼機能や、言葉がはっきりしない、息が漏れるなどの発音機能に障害が現れます。さらに顎の形や顔立ちと言う外見上の理由から、劣等感を持つなどの心理的な面にまで影響を及ぼし兼ねません。不正咬合については矯正歯科や審美歯科において殆どのケースで治療が可能です。発達段階の様子を観察しながら、適切な時期に専門の歯科医院で診察を受けることをお勧めします。