神経まで進んだむし歯について
【歯の神経と歯髄について】
一般的に言われる歯の神経とは歯の中央部にある歯髄という組織の部分であり、むし歯の際に痛みを感じるのは主にこの部分です。温度感覚や圧覚が存在しておらず痛覚のみの為、熱さや冷たさなど知覚したものは全て痛みとなって現れます。また歯髄には神経の他に動脈や静脈などの血管もあり、歯への栄養補給や象牙質の生産、細菌など異物の侵入に対し免疫反応を働かせるなど重要な機能を司っています。
【神経まで達したむし歯への治療】
歯髄部分である神経まで進んだむし歯の進行状況はC3と表されます。冷たいものだけでなく熱いものにも痛みを感じるようになり、痛みも長時間持続するようになってきている場合、このC3へと近づいていると考えられます。そして、むし歯菌が神経の入っている歯髄腔まで侵入して歯髄炎を起こすと神経が圧迫され、何もしなくても常時激しい痛みを感じるようになります。そこからさらに炎症が進むと歯髄が完全に死んでしまい一旦痛みが治まる時期がありますが、そのまま放置していると歯髄の先の歯根膜に炎症が広がり、激しい痛みと共に歯茎の腫れや膿が出るといった症状になっていきます。こういった神経まで進んだむし歯には根管治療という歯の根に対する治療が行われます。この段階の治療の際には、生きている歯髄の場合は触れたときに強烈な痛みを感じるため麻酔を使用することが多く、歯髄が死んでいる場合は麻酔をせずに治療することもあり、この治療には完治までに最短でも5週間を要します。まず初めにリーマーやファイルといった針の形をした専用器具を用いて菌の侵入した歯髄部分を取り除いて根管を拡大していきます。次に、それによってできた空洞に薬液を入れて洗浄と消毒を行い仮の詰め物で蓋をし、同様に1週間ごとに何度か薬液を入れ替え、歯髄の中が完全にきれいになったと確認できた後に、根管内をガッタバーチャなどの根充材を用いて封鎖し、根管治療は終了します。そしてその後、歯の中に金属などで芯となる土台を作り、その上に型取りしたクラウンなどのかぶせ物を装着させます。こうした一連の治療により、神経まで進んだむし歯に対しても噛む機能を取り戻すことは可能となっていますが、歯髄を取り除いてしまう為、その歯には栄養分が運ばれなくなり、脆くなったり変色したりと歯質は弱くなります。このようなことから治療後には噛む力に気を付け、メンテナンスにも十分気を配ることが大切です。また暫くは噛んだときに響く場合もありますが、次第に治まることも多分にあるので、我慢できなかったり痛みが増していくようであれば再治療なども必要になります。