エナメル質のむし歯について
【歯の最表層にあるエナメル質】
歯はエナメル質・象牙質・歯髄の3層構造になっていますが、その中のエナメル質は歯冠の一番外側を2~3ミリほどの厚みで表面を覆っていて人体の組織の中では最も硬く、96%の無機質と4%の有機質、水で構成されています。無機質の大部分はハイドロキシアパタイトと呼ばれるリン酸カルシウムの一種であり、電子顕微鏡で覗いた際にはまるで多くの爪楊枝を束ねたかのように見える無数のエナメル小柱に、組織化されたパターンとして結晶になって入っています。またリン酸カルシウムの他には、炭酸塩やクエン酸塩、乳酸塩、更にはフッ素、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、銅などおよそ40種類の微少元素も含まれますが、微少元素に関してはエナメル質の深さや年齢、地理的条件によって構成割合が異なります。このようにエナメル質は無機質が多い為に硬く、鉱物などの硬さの尺度を表すモース硬度で言うと6~7ですが、その反面脆いという特徴を持っており、この組織のみでは歯を構成するのは不可能で下部に何らかの支えを必要とします。無色透明ですが、その下に乳白色をした象牙質があり、その色が透けて見える為に歯の表面は白く見えます。また熱や電気を伝える度合いが極めて小さい不良導体であり、歯髄を様々な外部刺激から守ることが一番の役割となっています。
【初期むし歯の予防と治療について】
むし歯は口腔内の細菌が生産した酸がエナメル小柱の隙間に入り込み、それによってハイドロキシアパタイトが溶け出す疾患で、小柱構造が崩れる為にエナメル質のむし歯、いわゆる初期むし歯へと進んでいきます。こうした状態を脱灰と言いますが、その発生にはむし歯菌であるミュータンス菌の数や、酸を作る要因となる砂糖の主成分スクロースの摂取頻度に加え、唾液のpH値を中性に戻す働きや再石灰化及び歯質の成熟度が関連します。この脱灰による初期むし歯を予防するには口腔ケアが大切で、歯ブラシを使用して歯表面の細菌や食べ物のカスを減らすのが一般的ですが、フッ素をエナメル質に取り込んで耐酸性を向上させるという手段も用いられています。そしてむし歯の進行度にはC1からC4の4段階がありますが、エナメル質のむし歯はC1と最も軽く、痛みもないことが殆どです。そういった場合には、最近の歯科治療ではむし歯を削るのではなく、予防をしっかり行うことでそれ以上の進行を防ぐ傾向になっています。