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歯髄について

日本人の平均寿命は、2012年現状、男性が79.94歳、女性が86.41歳と世界有数の長寿国です。一方、歯の種類によって異なりますが、歯の寿命はおおよそ50歳から70歳と言われています。たった1本の入れ歯にしただけでも噛む力は1割程度落ち、総入れ歯では7割落ちると言われています。自分の歯があるからこそ食事も美味しく感じ、生きる力にも繋がります。その大事な歯は外側からエナメル質、セメント質、象牙質、歯髄腔から成り立っています。歯髄腔の中には様々な刺激を脳に伝える神経と、無数の毛細血管が存在しています。歯髄は歯の痛みを感じ取る部分で、痛覚以外の感覚は存在しません。従って、熱さや冷たさは痛みとして感じてしまいます。この痛みを感じること以外にも、侵襲に対して第2象牙質の形成をする、毛細血管による歯への栄養と酸素の供給、免疫細胞が細菌に抵抗し炎症などに対する防御反応を起こすと言った大切な役割を担っています。歯に加わる刺激を感知し、痛みとして虫歯の存在を知らせているのがこの部分です。

歯の痛みを感じて歯科医院を訪れると「神経を抜きましょう。」と言われますが、それはこの歯髄の治療をすることを言っており、虫歯が進行してC3のレベルまでくると根管治療をしなければなりません。それは、リーマーなどの器具で細菌に感染してしまった歯質や神経を除去して、歯の根の病気を治療するもので再び虫歯にならないよう予防の意味もあります。しかし、根管治療は歯根の中に複雑に入り組んでいる神経を完全に除去し、その空洞を無菌化した上で詰め物をするので手間暇もかかり技術的にも難しい面があります。そして、取り去ってしまうと、歯への栄養の供給が失われ歯が脆くなり大事な歯の寿命が短くなってしまいます。できるだけ残すような治療が望ましいので、歯髄保存療法と言う神経を取らない治療が出現しています。この治療はアメリカで療法用の材料として認可販売されているドックベストセメントを用います。この用材は、金属イオンの作用によって虫歯の内部にある菌を死滅させます。この方法は高度な技術と高価な材料を使用する為、保険診療では扱われておらず進行のレベルによっては困難な場合もあります。いずれにしても、痛みが出るほど進行する前に定期検診や歯石除去をしてもらいながら状況を把握し、早めに治療することが肝要です。